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現状を打破する変革人材の採用・育成のすすめ(後編)

福井 信英
福井 信英
2009年7月15日
 前回のコラムでは、どのような経営環境下でも利益を生み出すことのできる「変革人材」を採用する方法として、下記の3つの条件をまず満たす必要がある、と述べた。


1.変革人材の力を120%引き出し、活かす環境を整える
2.変革人材にターゲットを絞ったアプローチ(広報)を行う
3.変革人材かどうかを見極める選考プロセスを設計する

 今回は、変革人材の採用に成功している企業が具体的にどのように環境を整えているかについて紹介していく。


●変革人材の力を120%引き出し、活かす環境を整える

 「企業変革」を実現できるほどパワーのある人材の力を最大限活かすために、比較的多くの企業で取り入れられている方法が、「若手社員のみによるプロジェクト実行」だ。若手社員のうちには、内定者や新入社員までもがその範疇となる。

 プロジェクトの内容は、新サービスの企画・マーケティングといったものが一般的で、このプロジェクトを事業的にも人材育成的にも成功させるためには以下の7つのポイントを押える必要がある。


・サービスの開発から販売、納品まで、サービスの全工程を若手社員のチームに任せる。
・社内で完結するプロジェクトではなく、顧客など外部の人間の評価によって、成否がわかるプロジェクトにする。
・入社年次が同じか、近い年代でプロジェクトに取り組ませる。
・可能な限り、複数の部門からメンバーを集める。
・チームメンバーは6~8人。(難しければ3~5人でもよい)
・プロジェクト期間中に、社内のエース級の人材が定期的・継続的にレビューを行う。
・プロジェクト終了後にしっかりしたフィードバックを行う。

 サービスの全工程を若手社員のチームに任せ、プロジェクトの成否を外部に委ねることで、早い段階から、「事業創造」「経営能力」「収益に対する責任意識」を磨くことができる。

 また、入社年次を近づけることと、異なる部門から人材を集めることには、社員の自発的発言とフラットな意見交換を促すという効果もある。これによって、リーダーシップや創造性を見ることができるし、磨くこともできる。リーダーシップや創造性は、現在の大企業で最も求められる能力のひとつだが、皮肉なことに、完成された業務フローの中に若手人材を押し込めてしまうことで、彼らのリーダーシップや創造性を見抜き、磨く機会を奪ってしまっているケースが往々にしてある。


 チームメンバーを6~8人に固定するのは、組織論の観点から見て、チームで行う作業の生産性が最も高まる人数だからだ。これはアメリカの軍隊の研究から生まれたFFSという理論に詳しい。(ヒューマンロジック社という企業がこの理論に基づいたサービスを提供しているので、興味のある方はぜひ、そちらをご参照いただきたい。)実際に、近年の軍隊運用の考え方は、大人数の効果的な運用から、少数の精鋭部隊が戦況を独自に把握し、自律的に動く部隊が強いという論に変わってきているが、企業の組織運営を一歩先んじた形で実現していると言えるだろう。

 
プロジェクト期間中に社内のエース級の人材をメンター役として配置するのは、社内の一流の人材の能力を、若手社員に移管するためだ。プロジェクトを通じて、「優れた仕事の進め方」「優れた判断」をOJTで伝えることができる。若手社員が遠慮しがちな、「社内にある経営資源を調達・活用する」という側面も見せることができる。


 この制度と不況下に最高益を記録することとの間に、どの程度の因果関係があるかを証明することは難しいが、少なくとも、この制度を導入することで、意欲・能力に優れた人材を集め、彼らの力を十二分に発揮させることは確実にできる。


 前回、本当は一定数いるはずの「変革人材」に多くの会社が出会えない理由として、「商社」や「コンサルティング会社」「金融機関」といった一部の業界・企業に変革人材が集まりがちだ、という話をしたが、彼らは早い段階から様々なプロジェクトや事業に関わりたいと思っているからこそ、それができそうな企業群に集まるのだ。したがって、若手社員のみでプロジェクトを立ち上げ、事業化する制度を設けることは、彼らの目を振り向かせ、興味を惹かせる最初の一歩となる。社内に既に成功事例があれば更に望ましい。(もちろん、商社やコンサルティング会社を志望している層であっても、ブランド志向や大手志向の人は振り向かせることはできないが、そのような人たちはそもそも変革人材である可能性が極めて低いので問題はない。)


 ジョブウェブでも試しに入社1~2年目社員を中心とした5人のチームで新規事業の創造にあたらせたが、見事成果を生み出し、今期は一つの事業部として独立させるまでに至った。若手社員には、社内の内部情報に疎いという欠点はあるが、一方で、常識に囚われない発想を持ち合わせているので、引き出し方、サポートの仕方が成果の行く末を左右する。案ずるより産むが易し。人事担当者の皆様には是非トライしていただき、変革の呼び水として欲しいと思う。

次回は、変革人材にターゲットを絞ったアプローチ(広報)と、
変革人材かどうかを見極める選考プロセスの設計についてお伝えしたい。
>> 現状を打破する変革人材の採用・育成のすすめ(完結編)~変革人材と出会い、見極め、採用するためには に続く
この記事を書いた人
福井 信英
福井 信英

株式会社プロジェクトデザイン 代表取締役

大学卒業後、経営コンサルティング会社に勤務。学校法人のコンサルティングを手がけたことをきっかけに、人材育成に強い関心を持つ。3年間の勤務を経て、人材に関わる仕事を一生の仕事にすべく、株式会社ジョブウェブに転職。以降、新卒事業部長、キャリア支援事業部長を歴任。中でも体験を重視した研修教材の作成に力を入れ、東証一部上場企及び、急成長中のベンチャー企業を中心に、開発した教材が続々と導入される。2010年、株式会社プロジェクトデザイン( www.projectdesign.co.jp )を設立。現在は東京と富山にオフィスを設け、全国各地の企業の人材育成を支援している。

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